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キューバ視察9日間の旅 2013年10月21日〜10月29日

カテゴリー: - admin @ 17時36分31秒

キューバ視察9日間の旅
2013年10月21日〜10月29日

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キューバ管見
                              
(1)暗い。そして明るい

 ハバナの空港に着いたのは夜。
すぐに気がついたのは空港周辺の暗さだった。照明不足。大きな道路も街並みも住宅のまわりも暗い。
照明と商品の豊富さを幸福のシンボルと考えるならば、淋しい印象と言える。
しかし、すぐに思い直した。
夜は暗いのが本当だ。ここにあるのは本物の夜。
気取る必要はない。50年前の日本人の生活はどうだったか。1960年ころ、札幌の街でさえ運送のための馬車や馬そりが、ゴム長靴で歩く私のそばを通りすぎて行った。
もちろん農村・漁村では馬が主な動力源であった。車社会、そのための道路建設と照明の拡大がその後いっきに進んだのに過ぎない。
(もちろん他の参加者の印象が私と同じであるはずがないが、八〇歳の私にとってはありがたい貴重な旅であった。なにしろ現代史のナマの現実を50年前と後とで検証できる。そして想像力によって50年後も見る。)
それでは、日本の北海道の市民生活、その実態はそれほど明るいか。
過剰照明と電力過剰消費に引きづられ、その未来は全くの絶望しかないのに「原発」にしがみつく心情の実態。商品は過剰なのにいつも焦燥感に追いたてられている私たち。あらゆるものは「商品」としてしか存在できない。音楽も文学も美術も、あらゆる生活用具もその人ひとりの人生観価値観にぴったりのものは押し流され潰れていく。売れるものが一番という市場主義価値観に、老人の私も流されることがある。
照明は暗いが、キューバの人々の明るさは大変なものだった。それは民族の違いだけで説明するのに無理がある。革命の成果だ。

 

(2)革命の後の制度整備と実績

 天皇のいる日本ではクーデターはあったが革命はなかった。世界中では革命はあったが、その後の暴走と破綻と強権による弾圧が目立つ。とくに社会主義革命(と呼ばれる)の後の超大国の制度破綻は大きい。
社会主義革命から54年経たキューバは、その後の実績に目を見張るものがあるといわれている。
医療・福祉・介護、そして教育が完全に無償。それが行き渡っている。とくに医学・教育の水準の高さとそれを他国へ恩恵として供給していることに注目した。
利潤追求のために最新の医療設備を備えている日本の大病院の水準と比べると不備な面は当然ある。
アメリカによる厳しい経済封鎖の中でも、乳幼児や老人の健康度は飛躍的に向上してきた。最新の設備・機器がないため「予防」に力を入れ、その成果もでている。
専門的なことはわからない私だが、医師の八割が女性であるということ、古い建物古い設備の中でも、関係者の自信と誇りそして上下関係にしばられない自由な魂は感知することができた。進んだ設備・薬品があればどれほど更に水準が上がることか。
(旅の前半は完全に学習だったが)農村地帯にある小学校と幼稚園の視察は楽しかった。
校長はじめほとんど高学歴の女性ばかり、しかも若い。概して美しい人が多かったが、私が驚いたのはその明るさと誇りだった。だから、子どもたちも明るい。
日本の小学校の実態を思って、その差に気づく。日本の教師に心を病む人がどんどんふえている。札幌の私の知人だけでも四人が休職に追いこまれた。教室で子どもたちが明るく自由に生きられるはずがない。
いじめ現象もここに遠因がある。幸せでない子がいがみ合う。例えば中学校の学級編成基準に日本では最大40人までつめてもいいことになっている。キューバではその1/3くらいだろう。ひとりひとりに目が届く仕掛けだ。
いったい、どちらが豊かな国なのか。

(3)現状はそりゃ厳しいが   

 地方に出ると道路がひどい。バスが圧倒的に不足。トラックバスを走らせても不足で、人々が炎暑の中で長い列を作って待っていた。
アメリカによる経済封鎖(いやがらせ)これほどひどい現実を作るのか   と思ってきた。
観光で外貨をかせぐ(チェ・ゲバラの人気がすごい)しかないのだが、一流ホテルもひどい。お湯が出ないことが何度もあった。
料理もすばらしいが、塩味が強すぎる。成人病の医療費をおさえるためにも要工夫。
かの国はだんだん良くなる。これに対して日本及び日本人はだんだん良くなる   といいきれるだろうか。ひとつの指標として、「貧困度比較」がある。国民所得の平均より低い人が多ければ、貧困度は上がる。美しい国日本に非常に高いアメリカが世界一。所得
較差がますます大きくなる日本。比較するまでもないキューバ   

 しみじみ考えてしまう。

 

 

加 藤 多 一 さん