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平和の旅レポート
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第46回矢臼別平和もちつき望年会に行こう! 2012年12月28日〜30日

カテゴリー: - admin @ 11時57分04秒

 昨年暮れ、旅システムの内山さんから「冬の北海道」へのお誘いを受けた。
「この寒いのに北海道?」一瞬ひるんだ。「矢臼別平和もちつき望年会」もあるとのこと。
私には10数年ぶりの訪問となる。
26日、大阪を発つ時には折から大寒波の予報でまたもや不安を抱えての出発となった。
しかし、新千歳空港に無事着陸したときには、「もちつき」よりも「いくら丼」「旨い魚や雪の温泉」・・に期待がひろがっていた。

 

 空港から電車で札幌へ。
そこで出会った光景には本当に驚いた。電車のホームはコテコテに凍てつき動くのが怖い!
線路の上には岩が砕けたような雪の塊がゴロゴロあちこちにころがっている。そこへびっしり雪を貼り付けた電車が入ってきた。これで電車が走れるのか!
早々に「北国の冬」を見せつけられるおもいだった。
外に出るとこれまた大変!道路の両脇はどこもかしこも1メーターほどに雪が積み上げられ、道はガチガチに凍結し、不気味に光っている。友人に荷物を任せ、大阪組は腕を支えあいながらホテルへ。靴に巻きつけたアイスバンドが手放せなくなった。

 

 翌日小樽ではやはり真っ白な銀世界。除雪された道も白一色。四方八方、雪の塀ができあがっている。内山さんの案内で今はホテルになっている多喜二ゆかりの拓殖銀行や、運河・文学館などなどを歩く。平日のためかいずれも訪問者が少なく、ゆっくりと観光できたのはありがたかった。
雪の中にたたずむ小樽は、古い街並み・重みのある建築物がその歴史や平和の尊さが静かに伝わってくるようで深く印象に残った。

 

 28日朝10時、いよいよ札幌からバスで別海町へ、「もちつき望年会」だ。
西から東へと6時間の道程。この日はマイナス13度とか。
この間の道程はまた、冬の北海道を満喫させてくれるものだった。
バスが走るにつれて防風林以外何も見えない。見渡す限り広大な雪景色が続く。
夕陽に染まって地平の彼方ではオレンジやピンク、紫など淡い色に変化していく。
阿寒湖に向かう途中、休憩所で見た雄大な雌阿寒岳・雄阿寒岳。延々とひろがる紺碧の空に、放射状にのびる薄雲。そこに全山真っ白な姿で残照を浴び、浮かびあがっていた姿は神々しいほど。内山さんも「こんな様子はめったに見られないよなあ」。見事な姿を見せてくれていた。
阿寒国道の山越えではスリル満点?!「黒く見える道はかえって危険」と聞く山道。いくつも急なカーブを曲がっていく。運転手さんのストレスも大変!山頂から眼下に広がる世界はパノラマのよう。雪の「綿帽子」を被った山々がまるでクリスマスツリー一色に。壮大な自然の姿が長い道のりを飽きさせない。

 

別海町の「道の宿・島ふくろう」に着く頃にはうす暗くなっていた。
その夜、雪が舞い込む露天風呂を体験。満月を眺めながら雪煙の温泉は疲れた体には最高だった。

 

 28日、バスは矢臼別自衛隊の演習場の中へ進んでいく。
360度の世界が広がるこんな原野のどこに家があるのか。それらしい標識が見え始めやっとバスは目的地に到着。気温はマイナス17度。
懐かしい川瀬牧場に足を踏み入れる。「矢臼別ホテル」・D型ハウスが現れた。雪を分けてハウスの横に回るとテントに積もった50センチほどの雪がところどころずり落ちて「憲法条文」が目に飛び込んできた。川瀬さんの字だ。一瞬、川瀬さんに会ったような気がして胸が熱くなった。川瀬さんは逝ってしまっても、こうしてみんなに声をかけている。

 

 ハウスの戸を開けると「もちつき大会」は賑やかな掛け声で始まっていた。
朝から水道管が凍結して水が出ないなど大変なハプニングも珍しくないようで、数日前から泊り込みの仲間や、早朝から仕度にかけつける地域の人達。乳幼児から若者、お年寄りまで110人以上が集った。玄関では手際よく餅が蒸しあがっていく。(なんと20臼分とか!)そのそばで威勢のよい掛け声とともに餅がつきあがっていく。手前ではバンダナや手ぬぐい、エプロン姿の子ども達が大人に教わりながら楽しそうに餅を丸めている。地元の婦人たちはストーブの脇の調理場で雑煮やぜんざいの準備に忙しい。
丸められた餅は二個ずつ重ねて机に並べられる。やがて子どもたちや参加者が食紅で「平和」の文字をいれていく。
「餅つき望年会」は1年の平和の活動を振り返る場でもある。
餅つきが終了すると、手際よくみんなでいっせいに手造りの長机を並べて「望年会場」の設営だ。
飲み物や雑煮、おつまみが並べられ「望年会」が始まった。堅苦しい文書などはなく、12年度の10大ニュースが描かれた模造紙が壁に掲げられ、雑煮を食べながら和やかに報告が始まった。
こうして「もちつき望年会」はことしで46回目を迎えるという。大阪市の面積にほぼ匹敵するとも言われる日本最大の演習場のど真ん中。真冬には氷点下20度にもなるというこんな原野に、こんなに沢山の仲間が集まってくる。みんなで餅をつきあげ、また新しい年を迎える。この行事に寄せられた支援金の組織や団体名を紹介する用紙が天上からつり出されていた。中には○○小学・○○中学校という文字も見える。

 

 長年にわたり、粘り強く活動を支え、継続されてきた地元の平和委員会や労働組合、教組や農民組合、婦人団体、民主団体の多くの人々の平和への想いが伝わってくる。
―「自衛隊は憲法違反」「ここに居たいからいるんです」―川瀬さんの想いがしっかり、着実に引き継がれていることに感動させられる。
厳しい寒さ・真っ白な雄大な自然・雪の中の温泉・新鮮な魚とともに心に残る「退職記念ツアー」になった。

 



元大阪安保事務局 中野綾子