平和と教育を考えるツアー連絡会  
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平和の旅レポート
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白老ウポポイとカウボーイ焼きの旅に参加して  2022年4月27日

 

 平岡9条の会から、「旅システム」の白老ウポポイツアーにみんなで参加しようという話を聴き早速申し込みました。
 道民割のため12000円のツアーが7000円に、さらに白老町限定利用の2000円のクーポン付きのお得ツアーです。
 コロナ禍に加え、2か月を超えたロシアのウクライナ侵略、さらには知床沖の観光船事故等の鬱々たる社会情勢の渦中ですが、約10時間を日常からちょっと飛び出しバスの旅を楽しませていただきました。
 清田区の集合場所、東光平岡店東側から乗車したメンバーは、ほとんど馴染みの顔ぶれですが、久しぶりのバス旅行とあって、マスク越しにも身体全体からもウキウキとした感じが伝わってきます。
 旅システムのベテランツアーコンダクターの青木さんから、コロナ禍で沖縄辺野古ツアーなど取り組みたくてもできないことや、旅行会社には何の減収補填もなく経営が本当に大変なこと、そんな中で日帰りですがツアーを組めてとても嬉しいことなどのお話がありました。
 高速道路で白老に向かう途中のパーキングエリアでは、展望台から樽前山を望むことができました。マスクを外して大きく息を吸いこむと冷たく澄んだ空気が胸に広がります。清田区の3つのシンボルの一つ、あしりべつ川沿いから見える樽前山とはまた違った姿を見せてくれました。

 今回のツアーの楽しみの一つは、アイヌ問題研究家の荒木幸穂さんのお話です。
 「アイヌ問題研究家」というと、荒木さんは照れながら否定しますが全国にアイヌ問題の発信をしているれっきとしたアイヌ問題研究家です。
 荒木さんは私が初めて挑戦した2007年札幌市議選の選対本部長で大変お世話になった方で、さらには大変愛妻家でもありますが、その荒木さんが車中のお話の中で強調したのが、ほかのツアーではなかなか行けない「白老ウポポイ慰霊施設」のことでした。
 慰霊施設はウポポイの一施設ですが、博物館や体験交流ホールなどがある場所から約1,2キロ離れたところにあります。
 明治以降北海道大学などが研究のためとしてアイヌ墓地から遺骨を掘り保管し、全国の大学でも保管されていたアイヌ民族の遺骨が集められました。地元への返還を目指してはいるもののなかなか進まず、慰霊施設には今も1300体を超える遺骨が眠っています。
 アイヌの方たちからは、「『土から生まれ土に帰る』というアイヌ民族の死生観に立って死後はゆっくり休むため土に帰すべきだ。」とコンクリートで固められた場所で保管することへの異論や抵抗があるといいます。
 空に向って伸びるモニュメントの向こうには太平洋が広がり磯の香りがわずかに感じられました。直前に雨が降っていたのか、敷き詰められた芝生には水滴が銀のしずくのようにキラキラと輝いていました。
 参加者皆で、それぞれの形で黙祷を捧げました。
 立派な慰霊施設をつくってはいても、未だに北海道大学も日本政府も、アイヌ民族に対して正式な謝罪をしていないことを私たちは忘れてはなりません。

 白老町に住む、アイヌ民族博物館元館長の中村さん、白老観光商業協同組合理事長の盛さんのお二人のお話を聴きました。
 みんなに「自分史を推奨」していると話す90才の中村さんがアイヌ民族のことに深く関わったきっかけは、和人がアイヌ民族に同化政策を取り、言葉も名前も仕事も家も奪い植民地にした歴史を知り、「自分が和人で申し訳ないと思ったから」と話されました。純粋な方だと思いました。
 盛さんは、国立のウポポイが作られる一方で、地元の観光産業を衰退させる訳にはいかない、白老の観光産業を次代に継承するためと粘り強く取組み、町議会にも要望し、白老町の駅北観光ゾーン(ポロトミンタラ)にアイヌ工芸品のテナントを実現した経緯を話されましたが、私は北海道新幹線と在来線の廃止や、大型店舗と地元商店街の衰退を連想せずにはいられませんでした。
 盛さんのお店は翌日オープンでしたが、1日早く開店してくれ買い物を楽しむことができました。

 そして昼食は「カウボーイ焼き」です。白老と言えば白老牛かと思いきやアメリカ牛です。食べ放題ですからね。
 サラダ、焼き肉、ニンニクチャーハン(雑誌取材のためおまけ)、ペネコショイモ入りの甘―いおしるこで満腹満足の昼食でした。
 ペネコショイモはアイヌ民族の伝統食です。材料のジャガイモを屋外で保存しながら、凍結と氷解を繰り返し、水分を徐々に抜きながら熟成し、流氷であく抜きをし、再び水分を抜いた生地をすりつぶしてなめらかにするという手間のかかったものだときいて、味わっていただきました。

 このあと、本命であるはずの「ウポポイ」に足を向け、幻想的なアイヌ民族舞踊を鑑賞しましたが、広い博物館では疲れが出てせっかくの展示品を十分鑑賞できなかったことが悔やまれます。次の機会にと思います。
 2019年施行の「アイヌ施策推進法」ではアイヌ民族を「先住民族」とし、「アイヌであることを理由とした差別は禁止する」と明記されていますが、昨年3月日本テレビ系列「スッキリ」という番組で放送された差別発言が大問題になりました。このことは和人である私が私事としてとらえ、不断の努力をしなければならないのだと思います。
 アイヌ施策推進法を反映し、札幌市のアイヌ施策推進費はここ数年で3倍近くに増えていますが、当事者であるアイヌの人たちの意向が十分反映されているのか。また差別をなくすため札幌市がもっと力を入れることができないのかなどの疑問も頭をもたげます。
 慰霊施設に眠る遺骨を感じながら見た足元の芝生の銀のしずくと、ペネコショイモの甘いお汁粉そして白老町の方々やツアー参加者との出会いが心に残る「白老ウポポイとカウボーイの旅」をありがとうございました。



  

札幌市会議員 吉岡ひろ子